2011年6月25日土曜日

理論と実験

ある大学院生(2年生。日本で言うところの修士2年生)が質問しにやってきました。
置換アニリン化合物をアセチル化したいんだけど、普通はどういう条件でやるのか、と。

私の考えでは、基本は無水酢酸-ピリジン。
でもピリジンはあんまり好きじゃないので、とびやすいトリエチルアミンに変えて、溶媒はハロゲン系溶媒でいいのではないかなあ。さらに触媒量のDMAP入れたらより早くなると思われる。

かなあ。

でも、彼はSciFinderで似た化合物での反応を調べたらしく、
それによると無水酢酸だけを混ぜると書いてあったらしい。
で、彼はその条件でやろうと思うのだか、どうだろうかというのが相談らしい。

まあ、前例があるのなら塩基がなくても反応が行くのかもしれない。
詳細は分かりませんがNeatで溶媒量の無水酢酸で加熱とかすれば。
硫酸を触媒にするのもあり。
たしかにアニリンの置換基によってはアミノ基の塩基性も変わるのでうまくいかないこともあるとは思います。でも、それと同じ化合物の反応例が無ければその条件は採用しないなあ、というのが個人的な意見です。
で、決してボクの知識がすごいだろう、と言うつもりはありません。
これくらいのことは有機合成を仕事にしている人なら誰でも知っています。

そして、決して彼はできの悪い学生君ではありません。
いや、むしろ私なんかよりもずっと優秀な学生です。
MITの授業にも出てみたことがあるのですが、とても難しいことをやっていて、
テストの過去問を見せれもらったけど、もとても難しい。
でも彼はそういった試験にパスしてきたわけです。
一般的な有機化学だけでなく、物理化学、有機金属化学、電子論、無機化学などなど。。。
そもそもMITの大学院にはいっているというだけですごい。

でも、不思議とモノを作るという知識がすっかり抜けてしまっているのです。
こういう化合物はこんな感じで作れる、という感覚がまだ確立されていないのだと思います。
もちろんこれから卒業までの間に訓練を積むのだと思います。
あくまでもどっちが大事というわけではなく、
ただ、ちょっとびっくりしました。

ちなみに 私が一般的と思った条件ではそのアミノ基に1個だけ入れたかったアセチル基が2個入ってしまってダメだったそうです。無水酢酸のみでどうなったかは聞いていません。
ありゃりゃ。やっぱり先人の結果はちゃんと参考にすべきでした。ごめんなさい。

Noという言葉

研究室のメンバーはみんな出身地が違うので、基本的にお互い知らない前提が多いわけです。
アメリカのテレビをみても、みんなが笑っているところでサッパリ笑えない。
英語が分からない以前の問題で、アメリカの有名芸能人について知らなければ笑えない
ジョークだったりします。
なので、分からないのです。
ということで、ためらうことなく「なにそれ?」と聞きます。
これが、意外といい習慣ではないかと思います。
こっちに来てすぐのころは、自分の英語の理解の問題で話を理解できていないのか思って、
いろいろ聞いたりはしなかったのですが、いまはもうためらわずに「何それ?」と聞き返します。
遠慮してもトクは何もありません。 そして、みんな「何それ?」と言われるのにも慣れているので
「チッ」と思われることも多分ない。

そういえば、これは話の前提とかそういう問題ではないのですが、、
普段研究室で学生君としゃべっていると、なんだかぐだぐだと要領を得ないことを言う人もいて、
そういう人に限ってひとしきりしゃべったあとに”you know what I mean?"と聞いてきたりします。
(たぶん、その人自身もうまく説明できていないと感じているので、そうなるのだとは思いますが。。。)
そんな時、ためらわず、そして自信を持って”No”と言いましょう。
初めて”No"と言えた時、少し英語レベルがアップしたような気がしました。
今では結構快感です。

もうひとつNoで思い出しました。
Yes、Noはとても明快で分かりやすい単語だと思います。
家ではもちろん日本語ですが、Yes、Noはたまに使います。
なにか質問されたときに「うん(肯定)」か、「ううん(否定)」では音が似ているので
誤解が生じる可能性大です。生返事に聞こえるので、「ちゃんと話を聞いているのか」と
喧嘩の原因になったりもします。
こんな時Yes、Noで答えれば絶対に聞き間違えないし、生返事にも聞こえません。
「はい」はともかく、「いいえ」はちょっと言いにくい。
No、はとても便利な言葉です。

学校で習わなかった便利な英語表現 その10

学校で習わなかったけど、みんなが良く使っている単語。

bizarre [bizɑ'ːr]
奇妙{きみょう}な、とっぴな、奇抜{きばつ}な、風変わり{ふうがわり}な、異様{いよう}な、奇怪{きかい}な。

合成した化合物のNMRを測定してみたけど、なんか何ができたんだかわからないとき、
彼らは“bizarre"と言ったりします。
ほんとに聞いたことが無かった単語です。
そういえばNMRの結果が良く分からない結果だったというときに便利な言いかたがありました。
”inconclusive"
なるほど。そういえば結果を名言せずにごまかせるのか、


薬の値段

日本では病院で処方箋をもらっていた薬でも、
こっちでは薬局で普通に買えるものがあります。

例えば花粉症でお世話になっていたアレグラ。
最近アメリカでOTCになったらしく、普通に売っています。
この薬は花粉シーズンが始まるだいぶ前から飲み始めるので、
たくさん必要です。でも、何週かに1回は病院に行って処方箋を書いてもらわないと
薬が手に入りません。なので、これがOTCになったらとても便利だと思います。

ところで、こんなWebサイトがあることを知りました。
某製薬会社の薬の値段が書いてあります。
一番最後の薬に注目。
eribulin mesylateは1mgで$850。
いまとても有名な薬です。製薬業界、特にプロセスケミストの中では(たぶん)。
あれが1mgで$850というのは、安いと思いませんか。
超お買い得だと思います。

家電量販店の店員さん

家電製品を買うのに便利な電気屋さんにBest Buyという店があります。
小さな電気屋さんも他にもありますが、品ぞろえを考えるとやっぱり大きな店が便利です。

ということで、ある日スピーカーの延長コードを買いに出かけて、
それがどこにあるのか聞いてみました。
すると、店員さんが意外と商品のことを知らないのです。
「こういうものがほしいんだけど。」と言ったら
「たぶん2階にあると思う。」とのこと。
2階の店員さんに聞いてみたら、「たぶんあの辺」というだけ。

まあ、こんなもんなのかもしれません。ふつうは。
たとえば梅田のヨドバシカメラだったら、店員さんが、
こういうものはどこにあって、
これかこれかこれがいいんじゃないかとか、
聞いてもいないのにお勧めとかされちゃったりもします。
逆にちょっとうっとおしいくらいサービスがいい。

でもこっちではそんなことはあまりなくて、どうやら自力で探さないと
欲しいものは手に入らないということが分かりました。
逆にいろいろ接客されないのでその方が好きな人にはいいと思います。

道で人とすれ違うとき

最近になって気がつきました。
道を歩いていて人とすれ違う時、基本だれもよけてくれません。
学生君が数人でしゃべりながら歩いているときなんかはしょうがないかと思うのですが、
そんなときだけではないような気がしてきた。
なんとなく、日本の街では基本ぶつからないように早めに回避していたような気がします。
気をつけましょう。

2011年6月19日日曜日

ニューヨーク その3

最後の日曜日はMOMAだけにしました。
15時にバスで帰るので。

美術の教科書に載ってる絵がたくさんあります。
音声ガイドも日本語版があるのでとても便利です。



ここもかなり広くて、すっとばして一通り見て回っただけ。
もっと時間がいります。

近代美術館の良いところは大好きな椅子が置いてあるところです。



これは有名な椅子。併設のミュージアムショップで売っています。

椅子だけで5000ドル。オットマンが5000ドル。
さすがに買えませんが、それでもいろんなデザインのものが置いてあるミュージアムショップはとても楽しいです。ちなみに有名な無印の製品コーナーもあります。
アメリカでは人気らしい。

時間もあまりなかったのでどたばたと昼食を食べ、バスに飛び乗って旅行は終了。
うーん、やっぱりもっとゆっくり行きたかったなーとおもいつつ、
また次回の楽しみにということで。

スナック

最近発見したおいしい?スナック。
これです。
しょっぱいけどトウモロコシの味が結構強くて、
ポテチとはまた違ったおいしさです。

いや、昨日日本人のポスドクのひととどのスナックがおいしいかという話をしたので、
写真を撮ったことを思い出しました。

ニューヨーク その2

次は今回見て回ったものの紹介です。

金曜日の夜10時にニューヨークに到着してそのまま宿泊です。
バスでマンハッタンの北から島に渡り、真ん中あたりまで移動しました。

一般的にマンハッタンの北部は観光客は近づかない方がいいと
いろんなウェブサイトに書いてありました。
今回はバスで通り過ぎたので問題ないのですが、
確かに町の雰囲気は北と南ではだいぶ違います。

マンハッタン中部から南部は、普通に大都会、という感じ。
東京みたいなかんじですかね。
ボストンとは全然違う。ボストンはネオンサインみたいなのは基本ありません。

 二日目は早起きして、ブルックリン橋を通ってマンハッタン島に歩いて渡りました。

 橋を渡っている途中に自由の女神を発見。

 
遠くから見ているからだと思いますが、意外とちっちゃい。
自由の女神は島の上にたっているので、近づくには船に乗らなければいけません。
話によると結構混んでいる上に大して面白くない(あるアメリカ人大学院生の話)らしいので、
今回はパス。とりあえず写真だけとってみた。

午前中はセントラルパークを少し散歩してからメトロポリタン博物館 に行きました。

噂には聞いていましたがほんとに大きくて、とてもではないけど全部は見れません。
やっぱり1週間くらいかけてじっくり見るつもりでないとだめそうです。
とりあえず今回は3時間くらいだけ。また来なければ。

でもって、次は14時からミュージカルを見に行きました。
メアリーポピンズ。

アメリカでは超有名らしい。しらなかった。
結構たのしいです。
ちょっと困ったのは完全なブリティッシュイングリッシュ。
しかも歌いながらだったりするから全部理解するのは難しい。
でもそれでも楽しめました。

そのあと有名なTimes square周辺をうろうろ。
もう観光客でものすごい混雑です。





この後紀伊国屋書店に行ってみた。
日本にいた時は本買いまくりだったのが、
こっちでは全然読んでいないので、久々の大量の本につい興奮してしまいました。
でももちろん輸送代がかかる分お値段は高め。1.7倍くらいの値段でした。

夕食はあまり下調べをしていなかったばっかりに危うく食いっぱぐれそうになりました。
うろうろしてたまたまたどりついたKorean townで夕食。
最後に出てきたヤクルトみたいなのがおいしかった。
そういえばこういう乳性飲料みたいなのって、アメリカでは見たことがありません。


この日は一日ニューヨークをかなり歩きました。

I か We か。

学校にたびたび世界の有名教授が講演をしに来てくれます。
ほんとに名前は有名だけど見たことないような有名人がやってくるので、
毎回楽しみにしています。

さて、先日はある教授の講演があって聞いてきたのですが、
さすが有名人だけあって素晴らしい内容でした。
という話を後日あるポスドクとしていたら(彼も講演を聞いていた)、
彼はその教授が気に入らないらしい。
なんでもその教授は"we"というべきところを"I"と言い通して、ものすごく「オレがオレが」みたいな感じが強いというのです。

そうか。言われるまで気づきませんでした。
でもネイティブさんはそういうところも(当然)汲みとるんですね。
たしかに論文を書いたりする時は(基本一人ではなく二人以上で書くので)主語はWeになるのが一般的です。なので、研究成果を発表するプレゼンの時も当然Weになってしかるべきなのです。
もちろん共同研究者は最初に紹介されていましたが、

ちなみにその教授はネイティブスピーカーではありません。
Iと言ったのは意図的だったのか、そうではなかったのかは分かりませんが、
やっぱりWeが無難です。

2011年6月15日水曜日

ニューヨーク その1

行ってきました。ようやく。
金曜日の夕方にボストンを出て、日曜日の夜に帰ってくるあわただしいスケジュールで行ってきました。なんだか書くことがいろいろあったので、何回か分けて書きます。

今回は交通手段、宿泊についてです。

ボストンーニューヨーク間は350kmくらい。
最初は飛行機かと思っていたのですが、
友達に聞いてみたら、「だれも飛行機になんかのらない」とのこと。
調べてみると一番安くて60ドルくらいからありました。
ふつうは100ドルくらい。
でも、飛行機に乗ってしまったら空港からマンハッタンまで電車で1時間くらいかかるし、
飛行機に乗るのも手続きとかで時間がかかるし、
結局バスの方が早いし安いし、だそうです。
それから、AMTRAKという電車を使う手もあるのですが、
こっちは飛行機よりも高くて安くでも100ドルはします。
新幹線みたいな特急は3時間ちょっとだけど、もっと高い。
ということで、行き帰りもバスでした。

ちなみにバスもいろいろあって、普通は10から20ドル程度。
WiFi完備でコンセントも付いているので、インターネットをしながら移動できるというのがウリだそうです。片道4時間40分で、自宅から電車で15分の駅(Alewife)からマンハッタンの真ん中まで連れて行ってくれて20ドルです。
中には早めに予約したら1ドルというバス会社もありました。

宿泊ですが、ものすごく高いです。
いまちょうどバケーションシーズンで観光客が大勢いるからかもしれませんが、
どこもとても高い。
マンハッタンの真ん中にあるかなり古いホテルで、ユーザーの評価が低いホテルでも、
一部屋200ドル以上(2人でも一部屋料金)。
ちょっといいホテルになったりするともう平気で300ドル以上。
しかも、内装は多分きれいになっていると思うけど、それでもほとんどの建物はとても古い。

ということで、マンハッタン島から少し離れたBlooklynというところのホテルをとりました。
マンハッタンから地下鉄で20分くらい。
たしか150ドルくらいはしたと思います。
でもそのホテルは珍しく新築で、すべてがきれいでした。なので、満足です。
夜11時ごろにチェックインだったので治安とか大丈夫かなあと思っていたのですが、
とりあえずとくに危なそうな場所はありませんでした。一人歩きでもなかったし。

かえりもバス。
トイレが付いているからか、途中休憩はナシ。
運転手さん大丈夫かなあ。

Hooding

MITでは卒業式が終わりました。
たしか先々週。

うちの研究室を去年の8月に卒業していった大学院生もわざわざやってきて卒業式にでていました。
卒業時期が人によって違うので、もっとも近い卒業式に出ることになるそうです。

ちなみに卒業式とは言いません。Hoodingといいます。
卒業する人の衣装がきまっていて、
黒いマントみたいなのを付けます。そのマントにフードみたいなのがついている。
なので、Hooding、だそうです。
そういえばこの衣装、みんな買わされるみたいで、「たった1回のために高い!」と
怒っている人がいました。

2011年6月9日木曜日

自動販売機と魔法瓶

先々週の日曜日にConcordとLexingtonに行ってきました。
ボストンから車で30分もかからないのに、もうすっかり車社会で田舎でした。
道が広くて運転しやすくて助かります。

さて、車をとめて、観光名所をうろうろしていたのですが、
あまりの暑さに冷たいものが飲みたくなりました。
が、どこにも自動販売機がありません。
ほんとに、どこにもない。

自動販売機は、アメリカに来て以来
学校の中にたまーにおいてあったりとか、
(MITの中でもいままで3台しか見たことがない)
しますが、見当たりません。
あるとしても、ショッピングセンターの中とか。

それから、こっちでは魔法瓶というものがあまり一般的ではないらしい。
ヨメが自分の魔法瓶を学校にもっていったら、友達にいろいろ聞かれたそうです。
「どこで売ってるんだ」とか。
ついでに日本の自動販売機では熱いお茶も買えると言ったら、
いまいちイメージがわかないらしく、
「でも、缶は熱くないんでしょ?」とかわけのわからないことを聞かれる始末だそうで。
存在しないとは信じがたいのですが、少なくともあまりメジャーなモノではなさそうです。

ということで、自動販売機は無く、魔法瓶もない。
それでもみんなそれなりに機嫌よくしているというのは、すごいなーと思います。
夏だったらつめたい飲み物を飲みたいだろうに。

その代わり、というか、氷がたっぷり入ったプラスチックのカップのアイスコーヒーを
持っている人もいます。(ダンキンドーナッツとか、スタバとかの)
でも、氷、すぐに溶けると思いますが。。。
慣れれば、ぬるい水でもどうってことないんでしょうね。